【書評】キリンのひづめ、ヒトの指

解剖学・形態学を専門とする著者がキリンとヒトの比較を中心に、魚類や他の動物の例を出しながら、生き物の進化について紹介する一冊。各章は生き物の体の部位ごとに区切られていていて、専門的な知識が紹介されているのに、理解しやすく、読みやすい本です。

印象深かった話

印象深かった話をピックアップしてご紹介します。

解剖することで進化がわかる

内蔵や筋肉、骨の構造などを解剖によって明らかにしたあと、他の動物と比べることによって、進化の過程でどのように進化してきたのかわかるのだそう。「肺」と「エラ」はもともと同じものが進化の過程で別の機能を持つようになったものである一方、「角」は5種類に分類され、別々の進化の過程をたどってきたものなんだということです。

比較にあたっても、作りや体のどこにあるか、構成成分などいろんな角度から比較して、進化の過程が明らかになっていきます。

首はヘビにはあるけど、魚にはない

「あなたの”首”はどこですか?」という入りから、あれ?首?と明確な定義がわからなくて困惑してしまいますが、「頭と肩に挟まれた”隙間”」のことだそう。一見わかりにくい動物でも、頭蓋骨と肩甲骨に挟まれたところが首なのです。

ヘビは進化の過程で手足を失っているものの、筋肉の名残などから首の場所が推測できるのだそう。

著者:郡司芽久

1989年生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。東洋大学生命科学部生命科学科助教。専門は解剖学・形態学。第7回日本学術振興会育志賞を受賞。

目次

  • はじめに――解剖からひも解く生き物の進化
  • 第1章 肺 息苦しい水中への対応策
  • 第2章 手足 手のひらを返すヒト、返せないキリン
  • 第3章 首 頭と肩に挟まれた隙間
  • 第4章 皮膚 外から支える偉大な「臓器」
  • 第5章 角 その不思議な魅力
  • 第6章 消化器官 たくさん食べるか、無駄なく消化か
  • 第7章 心臓 はるか遠くへと血液を運ぶ旅
  • 第8章 腎臓 「毒」の排出を担う器官
  • 第9章 呼吸器 酸素の取りこぼしを減らす工夫
  • 第10章 進化とは妥協点を探ること
  • あとがき――自分の体を知ることは【商品解説】

おわりに

日常では意識することがない動物の進化について読みやすくまとめられており、視野が広がった本でした。進化や機能についてロジカルに説明したあとに、一言添えてある著者のコメントに人柄が見えて、より楽しい書籍に仕上がっているなと感じました。動物園に行ったら、角の違いを比べてみようと思っています。