【書評・ネタバレ】三体〜壮大な宇宙を描くSF小説/2023年Netflix公開予定

三体は中国のSF作家「劉慈欣」による長編SF小説。SF最高の賞一つであるヒューゴー賞長編小説部門をアジアで初めて受賞した作品です。

日本では早川書房より、2019年7月に1巻が発売され、最終作の3巻は2021年に刊行されました。2巻と3巻は上下巻に分かれており、シリーズ全てで5冊。1冊あたり400ページ超の大作です。

  • 三体 2019年7月4日発売
  • 三体Ⅱ 暗黒森林 2020年6月18日発売
  • 三体Ⅲ 死神永生 2021年5月25日発売

1巻の読了時点ですでに満足感があったのに、2巻、さらに3巻とスケールが拡大。SF好きにはたまらない内容になっています。

2023年にNetflixで実写版ドラマ公開予定

2022年9月25日(日)に開催されたNetflixのファンイベントTUDUMで初めて映像が公開されました。その映像の中では制作陣がコメントを寄せています。Netflix公式の表記は『3 Body Problem(原題)』となっており、小説の原題とは少しだけ表記が異なるようです。イベントでは「叙事詩的な物語」として紹介されており、そういう表現をするのかぁと公開が楽しみになりました。

原作では次元を超えた表現が複数使用されているので、いったいどのような映像で表現されるのか非常に楽しみです。

感想(ネタバレ注意)

三体Ⅰでは全く想像がつかなかった壮大なエンディングでした。1巻だけでも社会問題から主人公の不満、そしてその行方が盛り込まれており、読み応え十分な作品。続く2巻でも人類が直面する複雑な事態が描かれているのです。

ところが3巻を読み終えた今となっては1巻はまるっと三部作の序章でしかないとわかるのです。いろんな小説を読んできましたが、ここまで壮大なストーリーには初めて出会いました!

簡単にシリーズそれぞれの展開をまとめてみます。自己解釈が多分に入りますので、その点はご理解の上お楽しみください。

三体Ⅰ

文化革命の中、物理学教授である父が殺害されるのを目にした主人公 葉文潔は、その後時を経て異星人を探すための極秘基地のメンバーとして勤務することになります。そこで得た技術を使い、地球文明の情報を載せた電波を宇宙に発信。その電波を受信した異星人”三体文明”と地球文明のやり取りが始まります。

三体世界は3つの恒星を持つ不安定な星。三体世界は人類を消し去り侵攻することを決め、地球に到達するまでの間に地球文明が三体世界の文明に追いつくことがないよう智子という粒子を送り込み、研究を阻止します。

地球では三体文明を取り入れようとする組織が秘密裏に動き出し、科学者が殺されていきます。この組織に対峙し、三体世界との戦いの準備を始めなければならないのです。

というのが三体Ⅰのストーリーですが、この一冊だけでもさまざまな伏線と衝撃的なストーリー展開で読了後はなかなか頭の整理がつきませんでした。葉文潔が地球文明を放棄しようとする強い思いの背景にあるのは文化革命での経験だろうと推測はするものの、そんなに無謀なことをしてしまうの?未知なる宇宙への好奇心なの?と想像が止まりません。

三体Ⅱ 暗黒森林

三体Ⅱは主人公も時代も異なり、葉文潔の娘の同窓であった羅輯を主人公としてストーリーが広がっていきます。来る三体世界との戦いに備えなければならないものの、智子によって技術の進展が乏しい地球では、面壁計画を考案し、羅輯は世界で数名の面壁者に選ばれ、三体世界に打ち勝つ戦略を練る責務を負うことになります。しかしその他の面壁者も含めて作戦はうまくいかず、羅輯は人工冬眠に入ります。

人工冬眠から目覚めた世界では、宇宙空間上に独立国家が誕生し自信に溢れていましたが、三体世界の探知機と接触し、地球の艦隊は壊滅。絶望に包まれることになるのです。

三体世界との力の差が明らかになる中、羅輯は宇宙に向けてある惑星の座標を送信。宇宙に他の文明を見つけたら生存のための最善策はすぐにその文明を消し去ることだという暗黒森林理論に基づき、三体世界の座標を送信するという威嚇を行い、三体世界の攻撃を留めることに成功するというのが三体Ⅱ 暗黒森林のストーリーです。

技術の差が明らかな両者に対し、侵攻を止める理由はそんなことで?とはじめは思いましたが、どこにどんな異星人が存在するのかわからないという条件を持ってすれば、暗黒森林理論は成立するのだと考えれば考えるほど思えてきてしまい、三体Ⅱは納得して読み終えることができました。

三体世界との戦いは終わったはずなのになぜ続編があるのか。疑問に思いながらも三体Ⅲ 死神永生を読み始めました。

三体Ⅲ 死神永生

三体Ⅲ 死神永生は航空宇宙エンジニアの程心が主人公。三体世界にスパイを送り込む階梯計画を実現に導くため、学生時代の友人である雲天明と再会します。程心に対し恋心を抱く雲天明は、脳だけになり三体世界へ向けて出発。

一方で、羅輯が智子を橋渡し役としながら三体世界との睨みあいを続けていました。次の執剣者に専任された程心は、交代した直後に三体世界から攻撃を受けるもその役割を果たすことができず、三体世界の支配を許します。侵略されてしまうのかと思ったところ、宇宙艦隊の一隻が三体世界の座標を宇宙に向けて発信したことで、三体世界は別の異星人からの攻撃を受け消滅。支配を免れたものの、発信元としておおよその場所を知られてしまった地球も危険にさらされています。

そんな中、三体世界の生き残った艦隊から智子を通じて雲天明が程心に会いたいと言っていると連絡が届き、二人は再会します。そこで雲天明が語った物語には地球文明が持っていない宇宙の仕組みに関する情報がたくさん詰まっていました。その解読を進めながら危険を回避する方法を探すものの、結局地球は他の異性人からの攻撃を受け、二次元世界になってしまいます。

唯一逃げのびた程心と、ともに事業を行ってきたAAは雲天明との約束の惑星に向かいます。約束の惑星に着くと宇宙艦隊の人類に出会い、程心はともに雲天明探しに出かけます。その道中で2人は次元の隙間から抜け出せなくなり、宇宙船に残ったAAの元には戻れなくなってしまうのです。そして程心たどり着いた場所にはAAと雲天明が残した記録と、小さな別の宇宙空間が。2人はそこで幸せに暮らしたあと、宇宙からの呼びかけに答え、小さな別の宇宙空間を離れ、消滅していく宇宙に身を任せます。

以上が三体Ⅲ 死神永生のストーリーです。強い思いを持って三体世界と対峙してきた羅輯に対し、決断できなかった程心。3部作それぞれの主人公は人間らしい判断や行動をとりながら、地球や宇宙の行く末を背負っています。

2次元世界になった地球から脱出したあと、作者はなぜこの組み合わせで時を隔ててしまったのか、その意図が全く理解が及びませんが、程心の行動にはある意味一貫性があり納得できました。

おわりに

ストーリーがあまりにも壮大で、知識が浅い私にとっては深く理解しきれない部分もありましたが、一作目を読み始めた頃には全く想像もしなかった結末に出会えてとても満足しています。SF小説好きの方にはもちろんおすすめですし、難解な小説はちょっとという方はぜひ、ネットフリックスの映像公開を楽しみにしていただけたらと思います。私もとても楽しみです。